2月3日から12日まで開催中の「ニューヨーク・ファッションウィーク」。市内ではさまざまなファッションショーが催され、ファッション関係者やモデルなど世界中のおしゃれピープルが一堂に集まっている。
ニューヨークが今年3月より小売店でのプラスチック製レジ袋を廃止し本格的なサステイナブル都市へ新たな1歩を踏み出すというこの時期、数あるショーの中でもあるブランドによる体験型ショーが注目を集めた。
廃棄ゼロに取り組みながら循環するサステイナブル(持続可能)ファッションを創作する前衛的デザイナー、ダニエル・シルバースタインと、彼のブランド、Zero Waste Daniel(ゼロウェイスト・ダニエル)だ。

彼は縫製工場と提携し、不要になった裁断後の生地やスクラップ(捨てられる素材)を利用して洋服づくりに取り組みながら、環境に優しい社会の大切さを謳っている。
ランウェーのないショー
ゼロウェイスト・ダニエルの今回のショーは、マンハッタンのイマーシブ(没入)体験型ミュージアム、Arcadia Earthで行われた。
モデルエージェンシー、Role Models Managementとのタイアップイベントで、会場で演じるのはニューヨークで活躍するハイスペックのモデルたち。
彼らが役者に扮し、深刻な地球温暖化や海洋汚染、ファッションが与える影響について訴えかけ、参加者は館内15のセクションを歩きながら楽しく学べるという試みだった。あるときはファッションのお葬式に参列したり、あるときは紙芝居形式で環境を守る重要性について学んだり。



なぜファッションに持続可能が必要とされるのか
ここでなぜ、サステイナブル(持続可能)ファッションが今注目されているのか、考えてみたい。ゼロウェイスト・ダニエルの取り組みとは対局にあるのはファストファッションだ。
90年代後半以降、安くて大量生産されたファストファッション全盛の時代だった。しかしなぜこんなに安い価格が実現できるのか考えてみたことはあるだろうか。まず1つは、生産地の劣悪で公正ではない労働環境が問題になっている。また質が悪くて長持ちしない使い捨て衣類は消費サイクルも早い。高級ブランドとて、値下げ処分をしなければ大量の売れ残りが出る。そのようにして大量の衣類が焼却処分され、環境に与える汚染問題は深刻だ。
それらの問題により、ここ数年でさまざまな企業がサステイナブル(持続可能)ファッションへ取り組み始めた。100%再生可能でリサイクルできる原料への切り替えに取り組んでいる「パタゴニア」、プラスチック製ボトルを洋服に再利用する人気アパレル「エバーレーン」、高級ブランドの買取りで循環システムを作り上げた「マテリアルワールド」など。ゼロウェイスト・ダニエルもそんな流れで、2017年に誕生したのだ。


中には高性能で便利な商品を生み出し、真剣に環境や労働問題に取り組む企業もあるので、ファストファッションを全否定するつもりはない。でも安くて長持ちしない衣料が手元にあるとすれば、それらはどこでどのような人々によりどのような環境とプロセスで大量生産されているか、想像してみるのも悪くない。
多くの人が少し見方や意識を変えてみるだけで、世界は少しだけ良い方向へ舵を切る。ゼロウェイスト・ダニエルのショーは、そのことを楽しみながら教えてくれるものだった。

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February 10, 2020 at 09:49AM
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