
新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、京都府乙訓地域の神社は、春の祭礼について、例年よりも規模を縮小する対応に迫られている。参拝者の制限や地域を練り歩く「渡御(とぎょ)」の中止など、長年続く伝統行事が形を変えることになった。春の祭礼は、本来氏子地域の平穏を願って行われており、一日も早い収束へ神職の祈りが続く。
4日、離宮八幡宮(大山崎町大山崎)で行われた「日使頭祭(ひのとさい)」。例年は製油業関係者ら約100人が集まっていたが、今年の参拝者は氏子ら20人ほどで、全員がマスクを着用し、一定間隔をあけて座るなどの対応がとられた。神職による祝詞奏上や献灯などが静かに営まれ、湯立神事や、油搾り体験ができる恒例の催し「えごまフェスタ」は中止になった。
祭りは、平安時代から続く神事で、離宮八幡宮が、中世に灯明用油の独占販売で栄えた歴史に由来する。参拝者の制限は、多くの人が集うことによる感染拡大を防止するため、氏子総代会で決まった。
離宮八幡宮は、平安京の人々が当時疫病に苦しめられていたことから、国家鎮護の願いを込めて勧請(かんじょう)されたのが起源という。この日は、新型コロナウイルスによる疫病早期退散祈願祭も行われ、津田定明宮司は「人が集まることへの批判があるかもしれないが、八幡宮として疫病退散の役割を果たしたいと考えた。ご理解、お許しをいただければと」と平穏への願いを込めた。
向日神社(向日市向日町)は、ご神体を載せた鳳輦(ほうれん)の車列が一帯を巡り、氏子が五穀豊穣(ほうじょう)や家内安全を願う「神幸祭」と「還幸祭」の中止を決めた。毎年5月に行われており、記録が残っている戦後では初めてという。
六人部是継宮司は「巡行でウイルスをまき散らしてしまう可能性がある。非常に残念だが、氏子地域の皆さんの健康と安全を守るため」と苦しい胸の内を明かした。各地区の氏子総代を招いた「奉告祭」を代わりに開き、安寧を祈願する。
京都府神社庁によると、神事への一般参列や関連行事は、状況に応じた判断をするよう、神社本庁から通知が出されているという。神足神社(長岡京市東神足2丁目)や角宮神社(同市井ノ内)でも神輿(みこし)巡行の中止について検討されている。
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