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世界進出狙うタイの化粧品 暑い国ならでは、納得の強みでヒット - 毎日新聞

タイコスメを購入して盛り上がる大学生ら=バンコクで10月18日、石山絵歩撮影
タイコスメを購入して盛り上がる大学生ら=バンコクで10月18日、石山絵歩撮影

 タイの化粧品(コスメ)の人気がアジア圏でじわじわと広がっている。きっかけの一つは、新型コロナウイルスの感染が広まった時期に「マスク着用時も化粧が崩れにくい」とその強みがソーシャルメディアなどで紹介されたことだ。タイの化粧品メーカーは、日本を含む世界への販路拡大を進めており、「コスメのタイ」を目指すべく、政府も支援に乗り出した。

愛用する人たちが口をそろえる魅力

 「日本の人にもぜひ使ってほしいです」――。タイブランドをはじめ、各国のコスメが手に入る首都バンコクの化粧品店は、学生にとって放課後の人気スポットだ。ここでタイブランドのリップクリームを購入した高校生、ブンブラジャック・スィーダムさん(17)は冒頭のように強調した。ブンブラジャックさんは顔色をよく見せるために数年前から色つきのリップクリームを使うようになったという。「性別を問わず、このリップを使っている友達が多い。発色が続くので塗り直す必要がなく、便利です」と話した。

 タイの化粧品を使う人たちが口をそろえるのは、化粧崩れが少ないという魅力だ。タイの人気コスメブランド「キャシードール」などを手がける化粧品会社「カルマート」の取締役補佐、ポンウィワット・ティーカーキリグンさん(39)に特長の理由を尋ねると、こう答えが返ってきた。「タイの四季はHot(暑い) 、Hotter (より暑い)、Hottest(最高に暑い)と雨期です。とにかく汗や雨に強い化粧品を追求してきました」

「マスクをしても影響が出にくい」

タイの人気コスメブランド「キャシードール」などを手がける化粧品会社「カルマート」の取締役補佐、ポンウィワット・ティーカーキリグンさん=バンコクで10月19日、石山絵歩撮影
タイの人気コスメブランド「キャシードール」などを手がける化粧品会社「カルマート」の取締役補佐、ポンウィワット・ティーカーキリグンさん=バンコクで10月19日、石山絵歩撮影

 ポンウィワットさんによると、日本や、美容の最前線とされる韓国では、メークの仕上げに専用スプレーをかけるなどして化粧崩れを防ぐことが多い。一方、タイではファンデーション、アイシャドーなどそれぞれのコスメの耐水性が高いため、他に何もせずとも化粧持ちが良いという。

 タイでは近年、大気汚染が深刻化しており、新型コロナ対策の緩和後もマスクを着用する人が少なくない。ポンウィワットさんは「私たちの商品はマスクをしてもメークには影響が出にくく、お薦めです」と強調した。

安価なお試しサイズが若者に人気

 1948年から続く老舗の化粧品会社「シーチャン」の人気も高い。同社は創業まもなく、化粧崩れの大敵である油分のコントロールに優れたパウダーを発売し、国内で爆発的なヒットを生んだ。その後、その特徴的なパッケージや香りが「年配層向け」と捉えられるようになり、一時は売り上げに陰りが見えた。しかし、社内の世代交代とともに、2014年ごろからパッケージを変えるなどブランドイメージの更新に成功。今や若者にも支持されるブランドとなっている。

コンビニなどで小分けサイズで販売されているタイブランドの化粧品=バンコクで10月19日、石山絵歩撮影
コンビニなどで小分けサイズで販売されているタイブランドの化粧品=バンコクで10月19日、石山絵歩撮影

 こうした若者層へのアプローチに一役買っているのは、安価で手に入るお試しサイズのコスメだ。タイのコンビニなどでは、リップやファンデーションだけでなく、マスカラなど幅広い商品が小分けで売られており、旅行用やお土産としての人気も高い。お試しサイズのコスメをよく購入するという大学生、スィリガンヤー・チャウワンディーさん(22)は「正規のサイズの商品を買う前に、自分の肌との相性を確認することができます」とその利点を語った。

韓国ブランドの良さを吸収して成長

 コスメといえば、世界的に韓国ブランドの人気が高まっている。タイでも韓国コスメの地位が高く、タイブランドでありながら、韓国で製造し、パッケージにあえて韓国の国旗やハングルを印字するコスメも少なくない。一方、韓国ブランドとタッグを組み、その人気の秘密を吸収するメーカーもある。カルマートのポンウィワットさんは「成分や売れ筋は韓国から学んでおり、タイコスメの品質は確実に進化している」と胸を張った。

 ポンウィワットさんの父が立ち上げたカルマートの前身「ダイスター」は元々、タイでLGやサムスンといった韓国ブランドのテレビや冷蔵庫、エアコンを受託製造する会社としてスタートした。後にそのノウハウを用いて独自ブランドの家電を生み出し、15年前からは化粧品の製造・販売に業態を一変。ポンウィワットさんは「化粧品においても韓国を追いかけていますが、将来的には韓国と並び、(世界各国の)消費者の選択肢の一つになることが夢です」と話した。

「『コスメのタイ』を定着させたい」

小分けサイズが人気のタイブランドの化粧品。韓国で製造し、あえて韓国の国旗を印刷するものもある=バンコクで10月18日、石山絵歩撮影
小分けサイズが人気のタイブランドの化粧品。韓国で製造し、あえて韓国の国旗を印刷するものもある=バンコクで10月18日、石山絵歩撮影

 タイコスメ人気は国外へも着実に広がっている。カルマートは日本、中国、台湾、フィリピンなど19の国・地域に輸出しており、今年はこれらのエリアで約2億7000万バーツ(約11億3400万円)の売り上げを見込む。シーチャンも日本のドラッグストア2000店をはじめ、中国、ラオスなど7カ国で販売。同社のラウィット社長は地元メディアの取材に「高い品質が求められる日本で商品が認められれば、さらに他の国に広げやすい」と話し、近隣のインドネシアやマレーシアでの販売拡大も狙う。

 こうした動きを受け、タイ政府も支援に乗り出している。国立科学技術開発庁は10月末、タイコスメ協会と共に国内のコスメ開発を技術支援すると発表した。同協会のラクスパ会長はバンコクでのイベントで「タイコスメは非常に大きな可能性を秘めているが、商品戦略、技術が進む国との世界的競争、消費者が好む環境に優しいパッケージ開発などで後れを取っている」と指摘。「市場調査なども進め、『コスメのタイ』というイメージを定着させたい」と話した。【バンコク石山絵歩】

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