東京五輪のゴルフ競技が開催される埼玉県川越市では今夏、花火大会が中止になり、夏祭りが縮小開催されることになった。五輪と開催時期が重なると交通機関の混乱が見込まれるほか、会場周辺の警備に当たる警備員らの確保が難しいためだ。関係者からは「五輪に来た人たちに川越の魅力を味わってもらう絶好の機会だったのに」と残念がる声も出ている。
川越市などでつくる小江戸川越観光推進協議会は2019年12月の総会で、30回目の小江戸川越花火大会の中止を決めた。花火大会は毎年8月に開催され、五輪と時期が重なる。19年は約6000発の花火が打ち上げられ、約10万人が集まった。同市東部の伊佐沼公園と西部の安比奈（あいな）親水公園を交互に開催地としており、今年は安比奈親水公園で実施する予定だった。
五輪のゴルフ競技会場である「霞ケ関カンツリー倶楽部」の最寄り駅はJR川越線の笠幡駅で、安比奈親水公園と同じ。両会場ともメインの交通機関はJRになるため、開催が重なれば、ゴルフ観戦を終えた客と花火大会の来場者が笠幡駅に集中して混乱が予想される。
さらに深刻なのが警備要員の不足だ。例年の花火大会では、交通規制や警備に県警や民間警備員が当たってきた。19年は県警の協力で警察官約50人、民間警備員135人がそれぞれ警備に当たった。しかし、今年は五輪警備で4～9月に県警は余裕がなく、民間警備員も同じ理由で人員の確保が難しく、費用の高騰も予想される。
また、花火大会の開催時期の変更も、川越まつりなど他のイベントとの兼ね合いで困難だという。そうした状況から協議会の事務局を受け持つ同市観光課の担当者は「必要な警備態勢を用意できず、来場者の安全確保ができないことから、今年の開催は断念せざるを得ないと判断した」と苦渋の決断だったことを明らかにした。
一方、花火大会と同様の警備上の理由で、川越商工会議所などが毎年7月の最後の週末に実施している「川越百万灯夏祭り」も大名行列などの屋外イベントを取りやめ、大幅に規模を縮小することになった。詳しい内容は4月までに公表するとしているが、火縄銃の演武や、大名行列などの主要な祭りのイベントは見送られることになるという。
川越商工会議所の担当者は「せっかく五輪会場になって、世界中の人が川越を訪れ、祭りを見て街の魅力を知ってもらう絶好の機会だが……。できることをやるしかない」と話している。【仲村隆】
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