
能登各地で続く伝統の春祭りが、新型コロナウイルスの感染拡大で中止や縮小を余儀なくされている。能登町宇出津では約500年続く曳山祭(ひきやままつり)の中止が決まった。祭礼は世界農業遺産「能登の里山里海」の重要な構成要素だが、人々の密集を避けるため苦渋の決断を迫られた。羽咋市内では祭礼の一部だけを行った町もあり、はれの日にコロナ禍が影を落とした。
能登町宇出津の曳山祭は白山、酒垂両神社の春祭りで、18、19日に曳山と神(み)輿(こし)が巡行する予定だった。住民の多くが関わり、子どもも参加することから感染防止のため、3日夜の両神社の総代会で中止を決めた。神事は営まれる。
宇出津祭礼委員会によると、2007年の能登半島地震と11年の東日本大地震の際に神輿の巡行を自粛したことはあったが、最初から中止するのは初めて。
曳山祭は武者人形を載せた曳山2基が巡行する。曳山に飾られる人形は毎年作り替えてきた。
準備を進めていた人形作りも取りやめ、17日に予定していた「人形見」も中止する。大屋昭八委員長(77)は「残念だが、住民の安全を守るためには仕方がない。新型コロナが早く終息し来年はぜひ祭りを行いたい」と話した。
羽咋市内の春祭りのトップとなる下曽祢町では4日、奈鹿曽姫(なかそひめ)神社の春季例祭が営まれた。中止を求める声も一部にあったが、子どもが太鼓や獅子舞(ししまい)の練習を重ねてきたこともあり、協議の結果、規模を縮小して実施した。
町内を1周する例年の神(み)輿(こし)巡行はやめ、獅子舞演舞は神社と町会館、天狗(てんぐ)を演じた中学生4人の自宅3軒に絞った。拝殿での神事と巫女(みこ)の舞の際は、参列者全員にマスクが配られ、手の消毒も行った。
子ども太鼓を演奏した中村勇輝君(余喜小5年)は「演奏回数は減ったけど、いっぱい練習したので本番で演奏できてよかった」と笑顔を見せた。
はくい獅子舞保存活性化実行委員会によると、5月上旬までの羽咋市内各地の春祭りでは、神事のみに縮小する町会が多いという。
北國新聞社
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April 04, 2020 at 11:47PM
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