国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は、前回に続き、「青森ねぶた祭」の踊り手である跳人(ハネト)の衣装です。足袋と草履だけをピックアップして撮った、そのココロは?

©Masatoshi Nagase
前回アップさせていただいた、
青森で撮影した「雪の中の花笠」と対をなす1枚。
跳人の方々の花笠を雪の中に配置し撮影した後、
昼間に撮影していたモデルさんの跳人衣装がまだキープしてあったので、
足袋と草履も配置して撮ろうと思い立った。
ハネト=跳ねる人、その足元を支えるこの二つも写真に収めたいと。
もうすでに陽(ひ)は暮れていて、暗闇の中、1灯だけ照明を立て、
静かにシャッターを切った。
雪に埋もれた街は音を吸収して、無音の世界が辺りを包む。
特に人通りもまばらになった夜は、より一層そう感じる。
その時間、嫌いではない。
しかし、撮り終わってあがってきた作品を見ると、
僕は無音の中に、「ねぶた祭り」の熱気あふれる音が、
響いているように思った。
写真は、見る方々それぞれに思い浮かんだイメージが一番大切だと思っている。
たった1枚の写真から様々な想像が自由に生まれ羽ばたく、その瞬間が。
自分で撮影した作品でも、時が変われば感じ方が変わってきたりする。
そして、そう感じた瞬間から、また写真を撮りたいと強く願う。
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