自社工場をもたず、OEM(他社ブランドの製造請負)メーカーと共に独自の切り口で自社ブランドの化粧品を開発するかならぼ(東京都)。独自の切り口での商品づくりに定評があり、ヒット商品を生み出している。同社の代表である和田佳奈氏に、Z世代向けのメンズコスメ『メンコス』ブランド立ち上げの経緯やマーケティング戦略、メンズコスメ市場について聞いた。
肌の悩みをもつ男性に対して、コスメで解決するアプローチができると考えた
かならぼが「メンコス」を立ち上げたきっかけは、「メンズコスメは扱わないのですか?」と小売店に聞かれる機会が増えたことだ。
「男性の美容系アイテムは、薄毛やメタボなどコンプレックスを解決するもの以外は根づきにくいという印象をもっていたので、すぐにブランド立ち上げには至ったわけではなかった」そんな和田氏の気持ちを変化させたのは、Z世代の男性のSNSでのメイクのビフォーアフター動画だったという。普段からマーケティングをかねてSNSで情報収集をしている和田氏は驚いた。
「芸能人ではないのに、男性が眉毛を整えてメイクをしていた。発信をしているきれいな男性がたくさんいて、美意識が高いことも知った。私たちがZ世代のメイクのファーストブランドをつくり、彼らに寄り添える商品づくりができれば、市場として可能性がある」こうして、和田氏はメンズコスメのブランドの立ち上げを決めた。商品開発にあたって、マーケティング会社の協力を得てアンケートなどの定量調査、座談会などの定性調査を行い、多くの発見があったという。
アンケートの結果、男性の美容の悩みは肌悩みが圧倒的に多いことがわかった。そして、肌悩みの解決法としてイメージするのは、メイクで隠すことではなく肌荒れを「治す」という意識が強いこともわかったのだ。
「座談会でZ世代と話したところ、肌荒れをメイクで解決するという方法があることに初めて気づいたという印象だった。肌のコンプレックスをメイクで解決する方法を提案できたら、Z世代に受け入れられる土壌があるのではないかと思った」
「自分がメイクをしてもいいのかな?」と思う男性の背中を押すアプローチ
メンコスの最初の商品として生まれたのが『サンカット BB』というBBクリームだ。(BBクリームとは、美容成分やUVカット機能などが含まれているベースメイク化粧品のこと)
毛穴補正や皮脂コントロールなどの働きにより、ニキビや赤み、毛穴などをカバーできる商品だ。
最初の商品としてBBクリームを作った理由は、市場調査の際に「メイクはしないが日焼け止めは塗っている」男性が多かったからだ。
「日焼け止めをコスメというカテゴリ―ではなく、日用品として捉えている人が多く、メンズコスメとして受け入れられやすいと思った。私の学生時代には、日焼け止めを塗っている男子はほとんどいなかったので、その変化にも驚いた」しかし、柔軟なZ世代であっても、男性にとってメイクをすることがハードルであることは間違いない。
「自分がメイクをしてもいいのかな?と思っている男性が、商品を購入するという行動をとるためには、背中を押すようなアプローチが必要だと考えた」
これまでも多くのヒット商品を生み出してきた同社が大事にしているのは、共通の悩みに対してアプローチし、わかりやすいメッセージを伝えることだ。サンカットBBクリームの場合は、「日焼け止めを塗るついでに肌もキレイに見せられる」というアプローチを考え、「日焼け止め以上、ファンデ未満」というキャッチフレーズをつけた。
「MENCOS」(メンコス)はネットを中心に売上を伸ばしているという。商品の認知を広げるうえで、インフルエンサーからの発信が多いため、ネット購入につながりやすい。店舗での購入と違い、ネットの場合は価格が少し高くても衝動買いしやすいという特徴がある。
かならぼは大手ではないため、価格帯は大手化粧品メーカーに比べるとやや高い傾向があるという。その分、ユーザーに寄り添った商品であるという訴求を大事にしている。どのような層がメンコスを購入しているのだろうか。
「メンコスのユーザーは親と仲がよかったり、姉妹がいて、母親や姉妹から情報収集したり、指導される人が多い傾向がある。美意識高く育てられた男性が多い印象だ」
Z世代が年齢を重ねていくことで、メンズコスメの市場はゆるやかに広がっていく
男性に限らず、Z世代は上の世代と比べて美意識が高い傾向があるという。
「Z世代はSNSで自分の写真を投稿するなどして、自分の顔を見る機会が多い。写真加工アプリが発達したことで、現実の顔とのギャップを感じ、理想に近づけたくなる気持ちになりやすいのだと思う」私見かもしれないが、Z世代に人気のある俳優は、新田真剣佑や坂口健太郎、菅田将暉など、中性的な色気のある人が多い印象だ。男性の好みが中性化しているのだろうか。
「男性が中性化しているわけではなく、男だからこうでなきゃという考え方をなくそうという流れを感じる。男性がスカートをはくなど、さまざまなファッションの表現をする人も増えていて、多様性を受け入れる風潮になっている」メンコスのターゲットは、決して特別な男性ではない。「かっこいい、あかぬけたい」と思う普通の男性にメイクを使ってほしいと考えているのだ。
「いつの時代も、男性が憧れるのは女性にモテる人。一昔前は色黒のギャル男がかっこいいという時代もあったように、トレンドは世界的なブランドなどが作っていると感じる。そのトレンドをセレブやインフルエンサーが取り入れれば、一般の人が追随していく」
今後、メンズコスメは女性向けのコスメと同じように進化していくのだろうか。
「すぐには変わらないが、5~10年後には女性と同じようなアイテムを男性が使うようになるのでは。女性のコスメのように色を多用したものではなく、透明マスカラや陰影をつける色合いのアイシャドウなどを男性が使うようになると思う」
こうしたことからかならぼでは、2022年5月に自社が手がける女性向けブランド『Fujiko』とメンコスの共同開発で、男女年齢関係なく使用できるというコンセプトの「全人類リップ」を発売する。
「保湿力は高いのですが、テカテカにはならず、スムースな仕上がりになるリップクリーム。男性が受け入れやすいように、メイク感が強くなりすぎないようにした」全人類リップはFujikoの販路に載せて、メンコスの認知をさらに広げていく施策だ。
リップクリームは日焼け止めと同様に男性が抵抗なく使いやすいアイテムのひとつでもある。今後も、このようなZ世代の男性が必要だと感じるアイテムを企画していくという。
今後、メンズコスメ市場はどう成長していくのだろうか。
「メイクに関しては、男性より女性のモチベーションが圧倒的に高く、女性コスメと同様の大きな市場になるとは考えていない。しかし、今よりは確実にメンズコスメの市場は広がっていくだろう。10年後にはZ世代が年齢を重ねているし、さらに若い世代はZ世代を追随していくので、自然と層が広がっていくとみている」
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