長野県上田市のワイン用ブドウ畑に立つ北林さんと鈴木さん夫妻
日々の暮らしに欠かせない買い物。手にする商品の背景を知り、毎日使う「お金」の行き先を環境配慮型の商品に変えていくことで、社会課題の解決に少しずつ近づくことができるかもしれません。
「買えるSDGsプロジェクト」では、私たちが思わず「いいね」と唸った商品の背景や開発者のストーリーを紹介します。(通販事業部バイヤー・白木琢歩)
1,「もったいない」から生まれた。これだけ使えばOK、の美容乳液
何本ものブドウの木が、垣根のように規則正しく一直線に並んでいる。長野県東部の上田市。中心部から車で約20分。標高約500㍍の場所に広がるワイン用のブドウ畑は、ひざ丈まで雑草が生い茂り、ブドウの葉には所々虫に食われた跡が残る。
「除草剤や肥料、化学合成農薬を使っていないんです。だから生命力の強いブドウができる」。ここで採れたブドウの「副産物」を使って、天然由来原料100%の美容乳液を開発した「 Earth∞You (アースアンドユー) 」代表の北林健さんは話す。
副産物とは、栽培の過程で取り除かれ、通常ならごみとして捨てられるつるや葉、枝などだ。北林さんの事業パートナー・Sail the Ship Vineyardの田口航さんが育てたこの畑のブドウ副産物からは、抗酸化作用があるとされるポリフェノールの一種「レスベラトロール」が他の農場のものよりも高い濃度で抽出できた。美容乳液にはここで生まれたレスベラトロールが多く配合されている。つまりこの畑が育んだブドウがあったからこそ、商品が誕生した。
「ポリフェノールは、ブドウが紫外線などの厳しい自然環境から身を守るために自らつくり出す物質。生きる力が強いから、濃度も高くなったんだと思います」と北林さん。
開発までの過程では、妻の鈴木更紗さんを開発上の「ターゲット」としてニーズをくみ、何度もテストを繰り返した。肌荒れに悩み、既存の化粧品がしみる、などの悩みを抱えていた。一方で、肌ケアに何種類もの化粧品や長い時間を使いたくなかった。
「天然由来100%」「世界基準のCOSMOSオーガニック認証をとれる処方」は大前提として「しっかり保湿するが、べたつかない」「洗顔後にこれだけ使えばOK」など、妻の要求をクリアできるまで、試作を重ねた。良い香りのものは好きだが、職業柄、香りが残るものを身にまとえない。つけた瞬間だけ白ワインを思わせるような、優しくてさわやかな香りを楽しむことができるように仕上げた。
発売からおよそ2年。生産量が少なくまだ扱う店舗は少ないが、商品を直接試せる東京・有楽町のエシカルセレクトショップ「エシカルな暮らしLAB」では人気商品になった。上田市のふるさと納税の返礼品としても選ばれている。

2,頓挫した社内プロジェクト。「副業」として引き継ぎ販売へ
代表の北林さんは、大手飲料会社グループの現役社員だ。「本業」では、マーケティングや商品開発などを担当しているという。アースアンドユーの事業は、会社に認められた「副業」として取り組んでいる。
会社グループ内で、赤ワインに含まれる「レスベラトロール」の研究が進んでいた。「飲んでも、肌に塗ってもいいことが分かった。じゃあ、これでコスメを作ったらいろんな人の役に立つんじゃないか」。かつて就職活動では化粧品会社を目指したこともある北林さん。いまの事業につながるアイデアが浮かんだ。
仕事で訪れたワイナリーで、畑に山積みにされ燃やされていた剪定後の枝葉や脇芽を「もったいない」と感じたことも大きい。それらをアップサイクルし、コスメを開発するプロジェクトを社内ベンチャーとして提案。会社からもGOサインが出て、専従で2年ほど開発に取り組んだが、社内事情でプロジェクトは中止に。「このままあきらめなきゃいけないのか」。落ち込んでいたところで、風向きが変わった。社内で副業が解禁されたのだ。

3.イベントで反響。もっと多くの人と出会いたい
「未完のプロジェクトを、自分の手で完成させたい」。会社の了解を得て、副業として続けることにした。原料開発を一からやり直し、田口さんの畑で採れたブドウのつるを使った時、今まで研究してきた各地のぶどう副産物にない濃度の高いレスベラトロールを抽出することができ、商品化の道筋が見えた。その独自原料の配合は第三者機関に委託して、十分な機能を得られ、同時に妻のニーズにも十分に応えられる量を調べた。
完成した商品を知ってもらうため、各地のイベントに出向いている。そこで一人ひとりから得られるリアルな反応は、大企業で多くの人を相手に、何億円も売り上げることを目指す商品開発とはまた違った面白さがあるという。
「たとえば、定期的に参加しているイベントには、乳液を気に入って使い続けてくれているお客さんが『ほら、肌の状態がこんなに良くなった』って見せに来てくれるんですよ」。北林さんの表情が思わず緩む。
妻の鈴木さんも手応えを感じている。「夫婦2人の会社なので動ける範囲はまだ限られているけれど、世の中には現状に満足していなかったり、スキンケアに困っていたりするユーザーさんがたくさんいるはず。まだ出会えていない人と出会いたいですね」。
【買えるSDGsプロジェクト】
株式会社朝日新聞社、株式会社大広、株式会社Gabによる共同プロジェクト。日本最大級のエシカルメディア「エシカルな暮らし」を運営するGab社が扱う社会課題解決型の商品が、「朝日新聞モール」で購入できます。
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