企業の景況感がデフレ経済時の水準まで落ち込んだことで拡大基調が続いた国内景気に「黄信号」がともった。
深刻なのは、製造業の落ち込みをカバーしてきた小売りや建設など非製造業の減速だ。10月の消費税増税や台風19号で落ち込んだ個人消費は、増税前駆け込み需要の反動減対策が終了すれば減速に拍車がかかる恐れもある。東京五輪を控え、景気浮揚のきっかけを見いだしにくい状況だ。
12月の日銀短観では、好調な内需を支えてきた大企業非製造業の景況感が、3カ月先の見通しでも悪化が示された。五輪関連の需要の一巡で、右肩上がりだった建設や不動産の景況感も下落する見込みだ。日銀が“高水準”と強調する設備投資にも影響は波及しており、非製造業全体の今年度の伸び率(1・2%増)は前年度(5・4%増)を大きく下回る。
国内総生産(GDP)の約6割を占める経済の牽引(けんいん)役である個人消費の落ち込みは、特に大きな懸念材料だ。総務省が発表した10月の家計調査では、1世帯(2人以上)あたりの消費支出(物価変動を除いた実質)は前年同月比で5・1%減少した。
これは、消費税率を5%から8%に引き上げた平成26年4月(4・6%減)よりも大きな下落幅だ。前回よりも増税幅が小さく、軽減税率やキャッシュレス決済によるポイント還元制度など反動減対策を実施したにもかかわらずだ。
JTBの調査では、ボーナスを「貯蓄する」との回答が7割超と最多を占めており、消費意欲は鈍い。来年6月にポイント還元制度が終了すれば「消費の本格的な下落が始まる可能性もある」(農林中金総合研究所の南武志主席研究員)。
足元では米中貿易交渉の進展などにより株価上昇に期待が高まるが、日本経済は駆け込み需要の反動減が生じる10〜12月期にマイナス成長に転じる見方が根強い。政府は来年にかけて26兆円の経済対策を実施することで景気回復を図る狙いだが、「公共投資が中心の経済対策は、建設現場の人手不足もあり効果は限定的」(南氏)との見方も広がっている。(西村利也)
2019-12-13 10:53:00Z
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